何度目かの北国の帝王を見た。

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北国の帝王(原題/Emperor of the North Pole)(1973年 アメリカ 監督/ロバート・アルドリッチ)

貨物列車に無断で乗り移動する。押井守監督映画の立喰師のようなものだ。正直なところ、どちらを先に見ているかとなると北国の帝王を見ているほうが多そうだか。
その中でもエースと呼ばれる男と、まだ若い男。列車の車掌との攻防が物語のすべてだ。
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蒸気機関車の鉄の風合いが大変良い。しかしそれが分かるのは映画の導入部分だけで殆どの場面で見える列車は転輪のあいだや連結器、貨車の屋根などだ。

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いかにタダ乗りするかが全ての話で、それについて技巧的な何かは全然無くて真正面から貨車にしがみついて乗る。それを車掌が追い払うことを繰り返す。追い払うとは列車から実力行使で落とすのだ。車掌のアーネストボーグナインが怒った表情のままの人形の様な顔で終始追い回す。

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突き落とされたら、別の車輛を狙うことは無く、他の列車に乗り移っても目指すのはアーネストボーグナインの車掌の貨物列車だけだ。そして毎度貨車に間に合っちゃうのが可笑しい。

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途中で完全に下車してしまっても貨車を追い続ける。
しつこすぎてタダ乗りから、車掌とAナンバーワンの男の戦いになっていた。車掌はタダ乗りに対して偏執的になっていて、殺人すら厭わない。本来は金を払わない、しかも客車ではない車輛に乗ろうとするAナンバーワンが悪いんだが、劇中ではどちらが悪か、善悪は消失している。正義も拘ると単なる暴力でしかない。それに対してAナンバーワンは冷静だ。これを見ると男の戦いというと偉そうだが、かなり子どもっぽい性質から発症しているように見える。あえて云うならここにロマンがあるんだろう。

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シガレットと名乗る若者がAナンバーワンと共に行動するんだけど、こいつが調子良すぎてケツが青い。こういう場合の若造は経験者に鍛えられて成長していくものなのに終始調子のいいことばかり言い、姑息なことばかりする。

シガレットが憧れる北国の帝王も所詮はホーボーの英雄程度の意味しかない。

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