ボンクラ列伝に入れたくとも入れられない人。

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僕の出会ったボンクラ列伝に入れたくとも入れられない人がいます。何故ならばガチになってしまったからです。
模型の工房に出入りしていた頃です。よくお客様の言葉を絶対視する方がおられます。当たり前じゃないかと思うでしょう。そうではない話です。

ガレージキット開発がブーム的だった頃に模型店から依頼がありました、人気のメカニックキャラクターをインジェクションキットで開発したい。当時でもオンエアや劇場公開からしばらく経ち、続編も無かった頃ではありましたが根強い人気のある超メジャーアイテムです。これの国際スケールで完全変形となれば、相当な引きのあるアイテムです。むしろメジャーメーカーの仕事です。

工房では設計を担当することになったのですが、確か1/48だったかと思います。まだCAD/CAM時代ではない、手作業での設計と金型開発です。ここで模型店からの注文は「全ての寸法を1/48にしてほしい。」です。
模型に明るくない方は分からないと思いますが、プラモデルの縮尺は全ての寸法を縮小していないのです。主に全体の高さや長さなどは気にしていますが、物理的に不可能な個所や負荷のかかる部分などは、縮小したその大きさでのいい塩梅を探って設計します。また模型は原寸の本物を見る視点が変わるので、単純に縮小すると違和感が出ることを解消するために、これもまたいい塩梅になるように設計します。キャラクターモデルの場合は実物が無いか絵なので、完全に一致させることはできないことから一致せずとも絵との違和感を極力なくす設計をします。
が、これをすべて無視してあらゆる部分の寸法を縮小してほしいとのことでした。クライアントの言葉は絶対であれば「ハイ!喜んで!」の二つ返事で作業に移ればよいと思われるでしょう。しかし、物理的に不可能なのです。「それでもクライアントが言ってんだからやれよ!」と営業が言おうとも、1cm厚の板を1/48にすると0.28mmです。一点ものなら奇跡的に出来たとしても金型での量産は不可能なのです。物理法則を曲げられるなら曲げてください。今回の場合は間に営業がいなかったので直接説明しましたが、納得してもらえませんでした。そして開発は暗礁の乗りあげました。

そして法廷です。

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