レジェンド/光と闇の伝説という映画があります。

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他で書いたことの再構成増補改訂版。

レジェンド/光と闇の伝説という映画があります。リドリースコット監督の伝説のずっこけ映画としておなじみの。
1985年にアメリカで作られた映画で、誰もが想像するようなファンタジーです。
この映画は興行的にずっこけている。失敗しているので、いわくがあるわけです。どのようなものかと問うならば、アメリカ公開版(89分)と国際公開版(94分)の二つが存在します。更にディレクターズカット版(114分)が存在し、同監督のブレードランナーを思わせるバリエーション群なのです。

で、なんでこの85年公開のしかも興行的にも内容としても失敗している映画を今更見たのは、この二つを比較して欲しいと言われたからです。言われたらなんでも観るかと言うとそんなことはなく、自分でも見比べることで得られるものがあるかなと思ったからです。

ディレクターズカット版はともかく、アメリカ公開版(89分)と国際公開版(94分)の違いは尺もありますが何より大きく違うのは音楽です。国際版はスタートレックシリーズの音楽で知られるジェリー・ゴールドスミスによるもの、壮大な雰囲気を作り出すオーケストラでまさに僕らの知ってるハリウッド映画を印象付けるサウンドです。アメリカ版はドイツのロックバンド、タンジェリン・ドリームによるもので、wikipediaなどではロック音楽と書いてあるけど、ごりごりのロックじゃないです。例えるならば『オーディーン 光子帆船スターライト』というアニメ映画でラウドネスが主題歌を担当したが曲調はバラードだったり、X JAPANがなんかあるとForever Loveが流れてしまうような「ロックじゃないじゃーん!」な、抑えた曲調が多数を占めています。

元々指摘されている通りに、ストーリーが弩級の定番でありながら物語の進め方が単調で緊張感がなく、キャラクター性も活かされる事なく間延びした時間が流れます。これは二人の主人公への観客の感情移入という程ではないにしても、どちらに軸があるのかハッキリしないことにも物語への没入感が不足し、単純に面白くないという感想に結びついてしまうのではと思いましたね。
これは、宮崎アニメなど似たような立ち位置の男女の登場するファンタジーで、物語としても映像としても見ごたえのあるものが、特に日本語できちんと鑑賞できる日本の今だからこそ余計に感じのではないでしょうか。

じゃ、アメリカ版、国際版どっちが良いか。どっちも良くないです。どちらもメリハリの無い話の流れと演出です。5分の差は何かと言うとわかんないですよ。伸ばして台詞が多ければいいものでもなく、シーンやカットが増えてもそもそも間延びした単調な流れが問題なのだから、伸ばすのではなく刈り込まなければならないのです。切るにしても1カット丸ごとではなく、極端な話1コマ(映画ですので)ごとに検証している必要があると思います。刈り込むことで緊張感が出せれば多少見られるものになるかもしれません。またシーンやカットを入れ替えることも見易さ、観客の物語やキャラクターの理解度を早めることに繋がると思います。この映画に限らず、映画は序破急(起承転結ではない)で構成されていることが殆どで、「この映画つまんねーなー!」と思ったら破急序、若しくは破序急にすると見やすくなります。簡単な実践方法は途中から見て、後から最初の見ていない部分を見るのです。
これは完全に自分の能力を棚に上げて言ってますし、この映画自体、そんなに編集で力んで精度が上がるかというと、ましにはなるかもしれませんが、良くはなりません。編集で何とかする発想はすでに撤退戦であり、負け戦なのです。

ここでもったいなくも残念なのは、セットや特殊メイクなど所謂特撮の出来栄えが見事であり、それが活かされる事が無かったことです。アカデミー賞メイクアップ賞にノミネートされたり、闇の王(というキャラクター)は今でもフィギュアが商品化されるなど人気があります。しかし、それはキャラクターの見た目の単独の評価であり人気なので、映画としてのバランスはいびつなものだと思います。

もしかしてレジェンド/光と闇の伝説に興味が出てしまった人がいるならば、見るべき映画は
太陽の王子 ホルスの大冒険
もののけ姫
ヘルボーイ、ゴールデン・アーミー
ダーククリスタル
ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間、二つの塔、王の帰還
です。レジェンドは見なくていいです。

 

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