麦秋（1951年 日本 監督／小津安二郎）
凄く良いものなのか分からない。ストーリーは普通に見える家庭の普通に見える事柄を描いている。
主人公は婚期を逃した人として特殊に設定されている。単に独身なだけなのに凄く謎めいて見える。殊更自分が何かを表現されていなく、劇中では受け手に回っているので不思議な人に感じる。
多分、今後も小津作品を見た感想で何度も書くことになると思うけど、殆どの映画が同じ舞台で同じレイアウトだ。一時期TVで量産されたホームドラマの茶の間でのレイアウトは小津作品を引用しているのだが、TVドラマはカメラの入る位置に人を入れていない。ちゃぶ台を四人以上で囲むとどうしてもカメラに背を向ける人がセンターに登場してしまう。それを回避しているのだね。そこを別な今度番組で茶化してセンターで背を向けた人を強調して配置していたが、それに対してOKを出した人は小津作品を見ていない。何故ならば、元ネタの小津作品の殆どはちゃぶ台をぐるりと囲み、カメラに背を向ける人が常にいたのだ。それどころかカメラに背を向ける人はちゃぶ台以外でもたくさん登場する。カメラは無視されているのだ。
まねすべきはちゃぶ台を囲むことではなく、カメラに背を向ける人だったと思った。だからと言って背中を向けていれば解決する話ではないが。
台詞が棒読み調で間も全部同じで、決められた言葉を話すことを消化しているように感じた。仕方が無いから発音していると言うか。
麦秋に限らず、小津作品は映画に対して物凄く暴力的だなと思っている。特撮では作れない脅威の映像は大昔の日本にもうあった。
