殺人犯はそこにいるを読んだ。

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殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―(新潮文庫)
著者/清水 潔

2016年に文庫Xとして表紙、題名などを隠して、書店でキャンペーンが行われた本でもある。
こういう売り方をする内容はスピリチュアルなものや自己啓発的なものが多く、そういった類が大嫌いなので全く興味も持たなかった。
で、2016年12月からAmazonプライムでオリジナルドラマとして配信されたチェイスが殺人犯はそこにいるとそっくりであるという疑惑で知り、読んだ。
ここで挙げたドラマとは実際よく似ている。この本を原作としたドラマと言われたら納得する人は多いのではないだろうか。そのくらい所謂ドラマ化的なニュアンスでこのドキュメンタリーが活用されている。ドキュメンタリーなので実際にあった事件であり、本の著者とは無関係でさらにこのドキュメンタリー自体も関係を指摘したらきりがないじゃないか。と思う人もいるだろう。その前にまずこのドキュメンタリーもを読んで欲しいが、それは無理強いなので、どこがかと言うと、この本の視点自体がドラマに引用されているのだ。未解決事件を追うTVマン。この単純な視点がドキュメンタリーとドラマと同じなのだ。取材する順番、方法などもほとんど同じだ。事件を愛菜ているのではない、本の書き方を真似ているのだ。ドラマの方は尺も短く、完結させなければならない事情からか、2018年1月22日現在ではまだ完結していないものの、どうやら上手い事まとまる方向に進められている。(しかし、冤罪から解放された人の長めの高笑いで終わる回など、この人は実は冤罪ではなく、上手い事やった人に見えちゃうんだが大丈夫か?)

てなことで、ドラマに関しては著者並びに発行元の新潮社から配信停止などの声明が出されている。
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十数年前の事件を再取材しているので、事件そのものより取材をすること自体のドキュメンタリーの側面が強い。たまに出てくる細かい描写(ヘリコプターが上昇する様など)や自分自身の感想などが唐突で何が始まるのだろうかと謎な気持ちになることもある。
足利事件から著者の云う「北関東連続幼女誘拐殺人事件」に至るまでの事件以外に著者が取材などで関わった事件や天災なども登場するので、各事件に関するドキュメンタリーというよりも難事件に関わった著者の動向を書かれたものと捉えると読み進めやすい。
またある意味進行中の事件であるため、真犯人逮捕の結末は迎えておらず、今事件はどのように扱われているかということで本は締められている。しかし、よくわからなかったのは最終章が別の事件に関することになっていて、まるでネタが無くなったから他の事件の話を書いているように見えてしまった。中盤くらいからDNA型鑑定についての記述が多くなり、確かに難解かつ興味深い事ではあるものの、興味がDNA型鑑定に変わっちゃったかな?と思う面もあった。
本来の目的である真犯人を発見することでなく、出来る際上限のことが冤罪の証明であり、それが中盤で達成されてしまったので、ドキュメンタリーとして後半は苦しくなったかな。フィクションならクライマックスで大逆転する盛り上がりの場面が演出できたと思うが、ドキュメンタリーは現実だ。そんなことは起きない。

被害者遺族で被害者が事件で亡くなったあとに生まれた妹や弟にあたる方々の言葉で「お姉ちゃんに会いたかったよ」と出てくるが、事件ではないが事故のような病気で同じように兄が亡くなったあとに産まれた僕は、実はそのように思ったことが無い。まるで実感が無いのだ、会いたいとか会いたくないとかそもそも思わない。「お兄ちゃんがいたってのは嘘だよ」と言われたら「そうですか」と淡々と言ってしまいそうなくらいに実感がない。親が無くなった兄弟に関してどのように説明したかが大きいかと思う。蔑ろにしていないし、母は何十年経っても毎日仏壇の兄に手を合わせている。それでも僕は全く実感がわかない。字面でしかないのだ。そのくらい「無いもの」に対する実感は困難だ。実感が無いことが悔しい。

粘り強い取材をされていることは読み取れる。そこは良かった。ちょっと無頼を気取るようなところは嫌かな。FOCUSは出版社も発行部数、編集方針や内容など三流というには立派過ぎるように思いますし、それこそパクったドラマのようにBSへ左遷されたわけでもなく(これも差別っぽいなあ)キー局の解説委員でもある。これまた立派過ぎる状況です。これよりしょっぱい経歴の記者はたくさんいます。むしろ現場を忘れない一流記者である自覚と責任を表明されたほうが信頼が高まるのではと思いましたね。
それだからこそ、このような内容の取材とドキュメンタリーが書けているのだと思います。

紙の本
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kindle版
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